こないだ借りた「春の惑い」を見ましたよ。おさらいすると、もともとは1948年くらいの中国映画。を、中国でリメイクしたもの。原題は「小城之春」。小さい城じゃなくて小さい町。仲が冷えつつある夫婦の家に、夫の旧友が訪れると、なんとその旧友は妻の昔のかけおち失敗相手だった、というお話。
オリジナル「小城之春」の記憶はかなり曖昧なんだけど、リメイクでかなり変更があった模様。ストーリーは全く同じなのに、文学特殊講義としては別になってしまう。
夫の友人がいつもスーツで爽やかで上海でお医者さんをしていてイケメンに描かれてる度はかなり上がった。さすがにこれは現代的センスかも。対照的に夫の方は古い人物として描かれてた。にしても夫の妹の誕生祝の夜に、酔って歌歌いながら妻に迫る(?)シーンはやたら変態くさかったぞ。ちょっと怖い人だった。
オリジナルで印象的だった、画面一杯に蘭の花、しかも画面左下に花瓶があって右上に向かって葉や花が伸びる構図が、一度も出てこなかった。これは「対の文化」の中国的には「不安定」で、蘭の強い香りは女色の象徴ということで、危うい雰囲気の演出だったのに。もう一つは、妻の「語り」のナレーションが入ってない。東大のカリスマ教授はこの「語り」の意図がなかなか分からずに頭を悩ませたらしい、その語りがない。作中に普通に登場人物としているのに、別にナレーションを入れるのは何故か。と、それへの仮定を裏付ける、映画の冒頭に対応するラストシーンも無かった。(正確にはラストに冒頭が対応してるのか) ちなみに「語り」の意図は、映画の内容が現在進行ではなくて過去の回想だということらしいよ。それ以外に説明がつかないようだ。
リメイク版のラストシーンは、結局夫の友人は上海へ帰っていくときに、妻も夫も家にいて見送らず(お手伝いみたい人と夫の妹がお見送り)、汽車が走り去る音をバックに妻が家で刺繍をしている、というもの。ふーん…。普通に丸く収まって終わり。


まあ、比較したらそんなもんかな、と。まだあるのかも知れんけど、オリジナルをあんまり覚えてないからなー。なんせ講義のテキストとして見てたので。それより自分の卒論だよ…って感じだったしな…。面白いかと問われれば微妙かな。結局そんな「春の惑い」って名前のイメージほどは惑ってないし。やっぱりあの教授が見れば、リメイクされた事に関しては肯定的だろうけど、その出来について何と言うかは…。
私としては一度見たら充分かな。