関東に出かけるたびに思うけど…。
なんであんなに路線がたくさんあってホームがたくさんあるんだ……。
毎回毎回、迷ったり間違えたりしている。
山田さんと一緒にいると、迷わないし間違いない。手を繋いだり洋服の袖を掴んだり、とにかく山田さんから離れない。
方向音痴じゃない…と思う。路線図をちゃんと見れば分かるんだけど、電車の中の路線図は混んでると見えないし、ホームって案外、全体の路線図ってなかったりする。券売機のところにしかないよね。
で、急いでたりするとうっかり迷ったりする。そうそう、一つの駅に出口も改札口もたくさんありすぎだよ。
京都や大阪はもうちょっと移動しやすい。電車を乗り間違えたことはない。


そんな田舎者な私を、山田さんはいつも馬鹿にしながらも先導してくれる。…同郷なのに。
象徴的だ、と思う。こうやって、ずっと、過ごしてきたんだと思う。今更ながら、そしていつもながら、山田さんが好きだなあと思う。
惚気たいわけじゃなくて、本当に、素直に、そう思うだけで(惚気か)。
山田さんにだって短所はある。むしろ長短兼ねた人だと思う。人によっては短所だらけに見えると思う。それが私には長所に感じるのは、愛の所為じゃなくて単純に私の性格によると思う。好きだから許せるんじゃない。許せるから愛しいんだ。
…ちがうちがう。だから、惚気るつもりじゃない。
山田さんが居てくれるから私は見知らぬ街で安心して歩ける。世界を幸せに生きられる。


そんな世界を私は失いたくないだけだ。
下準備をちゃんとすれば東京で一人でだって迷わない。手帳の最後に載ってる各地の路線図を持っていかないのは怠惰じゃなく甘えだったと思う。


東京で電車に迷わず乗れるような、あの複雑奇怪な路線図が頭に入ってるような人が、石川県の小松駅で間違って降りてしまったとする。
加賀温泉駅へ行きたいんだけど、さて、金沢行きと福井行きのどっちに乗ったら良いだろうか。二択だ。でも路線図を見ないと分からない。迷うのは方向音痴だからじゃなくて単に知らないだけだ。


…何年も前の年度の、手帳を鞄に入れた。路線図だけが目的。もっと使いやすいヤツがあったんだがな…どこ行ったかな…。
今回は頼りにしている山田さんとずっと一緒にいられるわけじゃないから。ずっと甘えていられないから。
むう。
一人でもがんばらないといけない。今回は移動の大半が一人だ。